魔王

魔王 伊坂幸太郎著

何かにつけて思案を巡らせる安藤兄は、自分に不思議な能力が備わっているのでは無いかと、ある日発見する。そして、行きつけのバー・ドゥーチェや、弟の潤也とその彼女・詩織と共に行った遊園地でその能力についての検証を試みる。時世は、野党未来党の犬養が注目を浴びる頃。安藤兄は群集の流されやすさを危惧していた。

あとがきに、ファシズムや憲法、国民投票など、この物語に多く登場するそれらはテーマではないとありますが、どうしたって考えてしまいます。今の時流にも通ずるものがあるからなのかもしれません。このお話は面白い!けれども恐〜いとも思ってしまいます。著者があとがきでテーマではないと言おうとも、やっぱり寓意を含んでいる面が少なからずあるからで、日本人の長続きのしなさなんてところは、もう頷くばかりです。日本人のと言うのはもちろん自分も含まれていて、この物語の中の時流に立ったとき、安藤兄や、潤也、詩織のように、スカートの裾を直してあげられる人になれるのかは、どうも自信が無い。詩織の同僚の美人の先輩のように、直してあげたいと、そう思えるような人にくらいはなれるだろうか、なんて考えてしまいます。『考えろ、マクガイバー』安藤兄の口癖こそが大事だと思います。そういえば今回は千葉さんが出て来ていましたね。

ただただ流されていく事の恐ろしさ。以前にヴィンセント・ギャロが挿絵を描いているということで手に取った『茶色の朝』フランク・パブロフ著を思い出してしまいました。こちらは流されるままにしていたら気付いた時には大変なことになってしまった世界の寓話です。短いお話で、その当時は1ユーロで売られていたというツワモノです。そしてこの印税放棄1ユーロ販売で、世相が動いたというお話は、『茶色の朝』の巻末メッセージを読んで頂けば分かることと思いますが、その寓話を読んだ時の恐さというか不安感がこの『魔王』にも感じられました。『魔王』それから五年後の『呼吸』。この秋十月の下旬には、『魔王』の舞台から五十年後の日本として『モダンタイムス』が発売されるそうです。そちらも気になるところです。

魔王 (講談社文庫 い 111-2)

THEME:読んだ本。 - GENRE:本・雑誌

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 ドラマの『魔王』とは無関係。  文章上手いなぁ。  会話やちょっとした描写のセンス。思わずニヤリとしてしまい、電車の中で笑いを噛み殺す。巧まざるユーモア。  絶対にありえない一種SF的な、ファンタジックな設定も違和感なく読ませる。  ああ、この筆力が海...
2008/09/29(月) 20:50:35 | 読書狂日記
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