覘き小平次

覘き小平次 京極夏彦著

幽霊役をやらせれば、観る者を怖気たつような気にさせる木幡小平次は、大根役者である。会う者会う者を、苛々とさせ、痴れ者、うすのろと、面と向かって罵られるのが常である。役者でありながら演じることが出来ない。小平次はただそこに在るだけである。
自分の生き様とは斯くあるものさと、意地だの諦めだの様々なものを相混ぜながら、流され生きてきた人々にとって、あらゆることに反応を示さず、生き様を斯くありとすべく演じる素振りの欠片も無い、芝居に上がらぬ時にもただそこに在るだけの小平次は、気味が悪く怖ろしい。名も体も実を眩まし偽を真とし生きる者にとって、それは苛立ちを呼び殺意さえ呼び込む。

各章のタイトルにそれぞれの名前が上がる。そしてその一人一人の物語がスタートします。それが小平次という一つのものを背景に繋がりながら、展開していくのが面白かったです。それぞれの人の内側を、それこそ覘けるような感じでした。誰もが闇の部分を持っていて、こうして語られない限りは、対面しても見ることは出来ないだろうと思う人々。それを暴き出すのは、小平次と接したことで心の奥に感じ始めた恐怖であり、苛立ちなのです。大小あっても誰もが自分としては後ろ暗いと思うようなものを持っているはずで、小平次のような者がそばに在ったなら、たしかに心落ち着かず、それが苛立ちにかわるのだろうなぁと思ってしまいます。それも小平次が生きて在ると認識出来ていればこそ強気に腹立ちまぎれに小言くらいは言えるかもしれないけれど、幽霊然りとした状況の中で出られた日には、私ならば即ぷるぷると退散することだろうなと思いました。

覘き小平次 (角川文庫 き 26-12 怪BOOKS)

THEME:読んだ本。 - GENRE:本・雑誌

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COMMENT

幽霊役の演技でもなんもしなけりゃ、実生活でもただ黙ってうずくまっているだけでなんもしてない。なのに、周りの人間を勝手に苛立たせてしまう。何もしてないのに、とばっちりを食らってるのがかわいそうっちゃあかわいそうですが、周りに本当にこんな人間がいたら確かに苛立つかもしれませんね〜…。
2008/07/20(日) 23:00:43 | URL | おんもらき #SFo5/nok[ 編集]
おんもらきさん、こんばんわ。
ほんとですね/笑。小平次はまったく何もしていないのに皆に邪険にされてますよね。何もしないからそうされているのだけれど、かわいそうといえば可哀想です…。けどやっぱり、始終あの調子でいられたら、薄気味悪いか、苛立つかどっちかですよね。

又市、治平といえば巷説でしょうか?そちらはまだ未読で…ずいぶん前から積読になっております;そんな繋がりの楽しみもあるのだから、巷説の方にも早く乗り出さねば!と思っています。新聞連載の方は一体どんなシリーズなんでしょうね?楽しみです。
こちらこそ、CM&TBありがとうございました!
2008/07/20(日) 23:29:06 | URL | romi #sZpm1ECI[ 編集]

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