カルトローレ

カルトローレ−Cartorolle 長野まゆみ著

天空の航路を数百年、漂い続けた《船》は航行不能となった。《船》から降り、地上での暮らしに馴染む為、救済委員会の予備プログラムを終え、訓練施設を出たタフィは、ある土地へとやって来た。そこは、遥か昔には海だった、今は乾いた沙におおわれた土地。タフィは製本組合の育英基金から奨学金を得ると共に、《船》から回収された日誌の調査を任された。分厚く膨らみ、まるでパイにでも成りすましている全百九冊の日誌は“Cartorolle”という題のみがしるされたものだった。

いつもの長野さんの作品とは一風異なっているのだけれど、マテリアルはやはり長野さんというものがふんだんに含まれていました。訓練施設を出たばかりのタフィは、新しい土地で生活を始めます。タフィが自然と馴染み始め、この土地での生活に興味を持つようになるには、自治区の担当官であり《船》出身者でもあり、信頼に足りるコリドーや、この土地に古くから住み着くワタという人々その中の“年少のワタ”と呼ばれる少年。私的な記憶の大半をなくしてしまいながらも、どこからか新しい記憶を手に入れ、それでも何も疑問を持たないエルジンなどとの、ゆるやかな生活があります。白毛の人や、様々な紋様、《船》、日誌、何を知らせる為に訪れるのか知れない人々、警戒すべき事がありながらも、食事や憩いの時を疎かにしない、何に辿り着くにも急ぎすぎずにことを進める彼らの時間の流れに捕らわれて、読み終えるまでには普段の倍ほどの時間をかけて堪能してしまいました。
次々と情景を思い浮かべずにはいられないです。鳥が旋回する様子や、舞い落ちる羽、風が沙に描くすじ、光を照らし返す沙、水紅色の空、闇に揺れる蝋の灯。白さが印象的に残される、様々な情景に囲まれているような心持ちにさせてくれました。政庁からの管理や、それぞれの土地・民族の風習・言葉、などに、厳しい決まりごとなどがあるようなのに、ニュートラルな世界を揺蕩うような心地よさを感じることが出来ました。すてきなお話でした。

カルトローレ

THEME:読んだ本。 - GENRE:本・雑誌

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COMMENT

romiさん、こんにちは。
先日はコメントとTBありがとうございました。
この作品、本当に素敵でしたよね。
読んでしばらく経った今でも、ため息のでるような美しい情景が、
目の前に浮かんでくるような気がします。
わたしもいつもよりも時間をかけて、耽読いたしました。
こういう物語にならば、いつまでも浸っていたいですよね。
2008/06/22(日) 14:06:45 | URL | ましろ #rDq9ZsMs[ 編集]
ましろさん、こんにちわ。
耽読!まさにそんな感じで読んでいました。
ほんとに、いつまでも浸っていたい感じで、最後のページが来るのがおしいくらいでした。日常からふわりと引き離してくれるのが心地良い、そんな風に感じらて、本当に素敵なお話でしたよね。
こちらこそ、足を運んでいただいて、ありがとうございました。
2008/06/22(日) 16:17:13 | URL | romi #sZpm1ECI[ 編集]
romiさん、こんばんは。はじめまして。
コメント、TBありがとうございました。

この作品は本当どっぷり世界に浸って読んじゃうって感じの作品で、気持ちいいひと時を過ごせました。
装丁も素敵で、うっとり。

今日はちょっと時間がないんですが、読んでる本が近そうなのでまた寄らせていただきます♪これからもよろしくお願いしますm(__)m
2008/08/24(日) 21:48:56 | URL | ちきちき #-[ 編集]
ちきちきさん、こんばんわ!
この本は、ほんとうに世界観に浸れる系ですよね。
砂やクロシェの紋様を思い描けたり、装丁のように白っぽい日溜りの中に自分もいられるような気がしたりと、私もとても好いひと時を過ごせました。

読んでいる本、近そうだな〜と私も思っていました/笑。
こちらこそTB&CMありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
2008/08/24(日) 23:23:54 | URL | romi #sZpm1ECI[ 編集]

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