夜市

夜市 恒川光太郎著

今宵は『夜市』が開かれる。告げに来るのは学校蝙蝠。そこには、珍しくも奇妙、奇怪、貴重な品々が並び、その店先を覘く者たちもまた然り。いずみを誘い連れ立って『夜市』へ向かった裕司は、その昔自分の弟を『夜市』で売ってしまっていた−『夜市』。
七歳の春、花見先で迷子になった私は、親切そうに見えたおばさんに導かれて、その古道を通った。夜にはお化けが出るのだと聞かされた私は、未舗装であるその道、生垣、塀に囲まれた家々の並ぶ中、けれどもその家々のどれもが、この裏小道と呼ぶには広い道に玄関を一つも向けはしないその奇妙さ、見知った道にあるべきものが無いその道を、言われたままにまっすぐと、夢中に歩いた。そして五年後、私は親友のカズキと共にその古道を再び訪れる−『風の古道』。

『夜市』では、前半で『夜市』のルールが徐々に知らされるにつれて、『夜市』の中に誘い込まれました。後半に真相が明かされる部分がとてもおもしろくて、もの悲しいです。『風の古道』の方も、同じような空気感を纏っていて、とても好みでした。私は特にこちらの方が入り込めました。
形はないが確かに在りそうとしか呼べないもの、とは『夜市』で客が望む品物であり、『古道』で死者の骸に近寄る影であり、『夜市』を形成する品物、店、商人それらであり、『古道』を形作る全てであり、『夜市』であって、『古道』でした。そして、そこに迷い込むのは人間であって、『夜市』や『古道』そのルール、意思に従って、排除されるか、認められるか、はたまた取り込まれてしまうのか。そこはただただ、不思議な、妖しい、怖ろしい、そして魅力的な場所なだけではなく、その内での規約が確かに存在しています。そんなところがまた魅力的で、ダメだダメだと思いつつ、やっぱり少しだけ足を踏み入れたいような気になってしまいます。清流がさらさらさららと流れるような描かれ方が、怖さよりも魅力的と『夜市』や『古道』を夢想させてくれました。

これはもう、単行本発売当初にタイトルも装丁もかなり好みだったのだけれど、時期を逃してしまって…そうなるとなんだか中々手が出ない…という具合だったものだから文庫発売ということで即購入。ほんとにもっと早くに読んでいたらなぁというくらい、好きな作家さんになりそうです。

夜市 (角川ホラー文庫 つ 1-1)

THEME:読んだ本。 - GENRE:本・雑誌

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COMMENT

こんばんは。
幻想的な風景描写がとても鮮やかでしたね。
まるで映画を見ているように引き込まれました。
私も読むのは遅かったんですが、三作目「秋の牢獄」ですっかり魅了されて
二作目「雷の季節の終わりに」もこれと続けて読みました。
2008/06/02(月) 01:55:39 | URL | 藍色 #-[ 編集]
藍色さん、こんばんわ。
ほんとうに風景描写が素敵でしたね。藍色さんの言うように、映像的に思い描くことが出来ました。『雷の〜』と『秋の〜』のレビューを読ませてもらって、どちらもより気になりました。マンゴー芋ってなんだろう?みたいな^^ではでは、ありがとうございました!
2008/06/02(月) 21:17:49 | URL | romi #sZpm1ECI[ 編集]

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