Self-Reference ENGINE

Self-Reference ENGINE 円城塔著

時間はある日反乱を起した。過去も未来も無視してそれが絡まりあっているのなら、そのどれかは、始まりの瞬間に繋がっていたって良いではないか。もし万一、その瞬間に辿りつけたなら、僕のすることは決まっている。黙ってそのまま並んで進めと、怒鳴りつけてやるのだ。そして全てが元のように戻ったならば、僕はようやく彼女を探しに出かける。
『プロローグ:Writing/第一部:Nearside/第二部:Farside/エピローグ:Self-Reference ENGINE』

ベルトに挟んだリボルバーを無造作に抜き、ズドンとやらかすリタは、どこかネジのはずれた規格外に調子っぱずれの女の子。そのリタにジェイムスが恋をした。親友の為、リチャードは決死の覚悟でリタの元へと向かう。リタの頭に入ったままの弾丸がリタの頭から発射されリチャードの左胸を突き刺した時、それは“イベント”の発生ときっかり重なっていた…という『第一部:01 Bullet』からして興味をそそられました。それからは、こういう向きがあるかもしれないし、こうとも思えるかもしれないし、そもそも始めからなかったのかもしれないという風に捏ね回しながら進んでいって、あれ?そもそも今は何の話を…と思った時には、章タイトルを眺めると何となく指針が見えてくるような気になります。
時間軸がねじれまくった世の事で、巨大知性体が存在し、彼らはコンピュータなどと呼ばれたのは遥か昔過ぎて自分の事とは気付かぬほどで、既に随分昔々から人の手を離れて自己増殖で成長を続ける巨大知性体、その更に上には超越知性体なるものが突如呑気に現れる。人の延命なんかも時間改変でサクっとクリア出来ちゃう混沌とした時空間内で繰り広げられる様々な出来事は、難解風味を漂わせながら笑わせてくれました。
『第一部:08 Freud』なんかは、祖母の家を解体すると、床下からごろごろとフロイトが20体。『第二部:12 Japanese』の日本文字解明への巨大知性体の苦闘ぶりや、『第二部:yedo』のあまりにも懸絶した知性は途方のない馬鹿にもみえるを基盤に、名を八丁堀の巨大知性体の旦那や、サブ知性体であるハチが喜劇的計算の可能性の試みを命されて、まさに喜劇を繰り広げるところなんかは特に笑えました。こんなテイストが、そこここに散らされていて、その上こちらもぐるぐると時間に巻き込まれていくようで、楽しめました。

Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

THEME:読んだ本。 - GENRE:本・雑誌

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 オブ・ザ・ベースボール

オブ・ザ・ベースボール 円城塔著

『オブ・ザ・ベースボール/つぎの著者につづく』の二篇収録。
以前に読んだ、ハヤカワSFシリーズから出ている『Boy's Surface』は数学、物理学的な部分が多かったのだけれど、それに比べるとこちらは、文学的な風情だなぁという感じでした。

大体一年に一度の割合で人が降って来る街ファウルズ。その街でユニフォームとバッドを装備し、バッドの素振り及び体力作りを日課とし、日々空を仰ぎ守備をする『俺』は、ベースボール・チームの一員ではなく、レスキュー・チーム総計九人のうちの一人である。チームの打率は零進行中であるが、一応は街の英雄ということになっている。何故人が振って来るのか、理由は皆目分からない。知っているかもしれない当事者は、落下によってものも言えないものになる。降って来る人を救う為、支給されたバッドを持って、その時を待つ。という感じの『オブ・ザ・ベースボール』は、とても面白かったです。このくるっと回って輪になっている感があるお話は好みでした。

『つぎの著者につづく』の方は、何とも…引用されている作品の多くを読んだ事が無かったのですが、読んだ事があるものの引用部分に行き当たっても「ああ、あれか〜」と思うくらいだったところを考えると、知らなくても面白い、面白くないの感想には大差ないのではないかなと思います。が、断言は出来ません。
一つ賭けを行うとすれば、賭けを行う為の賭けが発生し、その全体が形作る別の賭けが出現する、ので都合三つの賭けとなる、という増殖。言葉の起源探索。個と個の差異と同一性もしくは入れ替え可能な個。というような感じのものが、それぞれ全部絡まりあって描かれているのかな?と思いますが、こちらは読むのが少々困難でした。

オブ・ザ・ベースボール

THEME:読んだ本。 - GENRE:本・雑誌

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 Boy's Surface

Boy's Surface 円城塔著

『Boy's Surface/Goldberg Invariant/Your Heads Only/Gernsback Intersection』の四篇。
数学的だったり物理学的だったりするものが、ふんだんに散りばめられていて、ちょっと取っ付き難いのか?と思われるけど、そんなことではありませんでした。真面目な仮面を用意しているけれど中々に巫山戯た感じも紛れていて『Boy's Surface』の章分けに用いられている座標が何を意味しているのかいないのかなんて事が分からなくたって、面白く読むことが出来ました。背景基盤に数学的、物理学的というものが陣取っているのだけれど、男子と女子の間にある訳の分からぬ溝、これ如何にといった具合に読むことが出来ます。

『Boy's Surface』では、合わせ鏡を覗き込む時のように、アメーバの如く自己繁殖する自分というものについて〜、なんて事も書かれていつつ、登場するレフラーと彼女であるフランシーヌの一つの事実を同じく過ごしながらも、視点の違いから全く違うものをそれぞれの真実と捉えているということが可笑しく、その最たるレフラー発言の私的ベストは便器発言で、それを言われちゃフランシーヌじゃなくとも憤るさと笑みがこぼれます。そしてそんな場面が全編通してひょこひょこ顔を出してくれるのと、難しげな単語が多量出現するというのに読みやすいのは句読点の間かなぁなんて思います。
二本目の『Goldberg Invariant』にしてみても、八章編成でナンバリングがランダムな事から、こちらは番号順が時系列なのかな?とは思いつつ、前から順に読み進めました。霧島梧桐の名を思い出す時、彼の失踪は必ずGRAPE64の失陥と共に現れて、掘り下げて考える程に現在確定されようとしている枠組みからはみ出してしまって、信じる事にも明記する事にも困難を極める。それではそのGRAPE64の失陥とは何だろう?となると、そこにはキャサリンがうじゃうじゃとAやらBやら出てきて、その初期入植者の他にも数字にてナンバリングされたキャサリンが数千といるのだけれど、梧桐の見解だろうところの『全体が正気のものであると信じ込む種類の狂気を、正気に考える方法が存在するとする狂人は常に存在する』(本文抜粋)で、うん×2と頷いてそれで満足でした。
三本目の『Your Heads Only』が一番好きだったかもしれない一作です。万物進化系的法螺話なんかも好みだったし、『僕』のなんとも素直な形を成さない愛がひどく好きでした。
最終『Gernsback Intersection』は、SFを読んでいたのだったと思い出させられたもので、全部SFに他ならないのだけれど、尚更SFと思うそんなSF。というのもきっと仮想世界やらなにやらと、時間系列の交叉なんかを持ち出されると、「あ、何かSF」と感じる私の単純な脳内のせいとも言えます。

全編通して、増殖し続ける何か、自己だったり点だったり線だったり色々や、自己と全体の境界なんてものだったりが描かれていて、精神世界系のお話にも通じるところがあって、まず世界設定ありきのSFなどよりは私としては読みやすく楽しめました。
ショッキングピンクの装丁が目を惹きます。見続け過ぎると目を逸らした瞬間にちょっぴり世界が緑がかったりするかもしれない感じでした。

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

THEME:読んだ本。 - GENRE:本・雑誌

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