砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない−A Lollypop or A Bullet 桜庭一樹著
都会の人が田舎に作った方が良いと考える全てのものが在るほかは、磯の臭いが香ってうらぶれているそんな町。そこで十三歳の山田なぎさは、実弾主義を貫く決意を魂と結んで過ごしていた。その三ヶ月目、砂糖菓子の弾丸ばかりを撃ちまくる海野藻屑がやって来た。藻屑の父は、このうらぶれた町一番の有名人・海野雅愛で、その昔『人魚の骨』などというロマンチックかつグロテスクな歌を残した人物だった。けれども、藻屑は、自分は人魚だという。そして人魚は皆ここの海で生まれ、世界に散り、十年に一度戻ってくる。それは予報もされない大嵐の日。藻屑がなぎさの元に現れて一月後の十月三日。
閉塞感漂う田舎町へ都会の匂い香る少女が現れる。その少女は主人公の少女に執着を持つ。それは綺麗に好意の形を描かなくて、それでも主人公の少女は、周りからぽっかり浮いてしまっている少女の事が心配になって仕方がない。ほとんどを虚構でコーティングして、それを固めることに必至な藻屑。『少女には向かない職業』の静香に通ずる…むむむむむと、『少女七竈と七人の可愛そうな大人』と『青年のための読書クラブ』は大好きだなぁと思ったけれど、それほどには乗りきれなかった『少女には向かない職業』をにわかに思い出した読み始め。けれども、半分過ぎたあたりからはいい感じに読み進められました。『少女には〜』に似ているけれども、主人公の少女・なぎさが、ひっそりと思いを寄せていた隣の席の坊主頭の野球部の少年・花名島正太とか、まったく現実を生きていないような兄・友彦とか、生き抜いたけれど大人になれなかったみたいな藻屑の父・雅愛とか、少女二人と彼女たち以外の人たちとの関わり具合が、『少女には〜』より好みだったのかもしれません。
実弾を撃ちまくるのも、砂糖菓子の弾丸を撃ちまくるのも、どちらも同じようにもの悲しさを感じます。『こんな人生全部嘘。嘘だから平気』って、そんな言葉は悲しすぎると、そう思いました。2004年富士見ミステリー文庫より刊行のものを単行本化。
都会の人が田舎に作った方が良いと考える全てのものが在るほかは、磯の臭いが香ってうらぶれているそんな町。そこで十三歳の山田なぎさは、実弾主義を貫く決意を魂と結んで過ごしていた。その三ヶ月目、砂糖菓子の弾丸ばかりを撃ちまくる海野藻屑がやって来た。藻屑の父は、このうらぶれた町一番の有名人・海野雅愛で、その昔『人魚の骨』などというロマンチックかつグロテスクな歌を残した人物だった。けれども、藻屑は、自分は人魚だという。そして人魚は皆ここの海で生まれ、世界に散り、十年に一度戻ってくる。それは予報もされない大嵐の日。藻屑がなぎさの元に現れて一月後の十月三日。
閉塞感漂う田舎町へ都会の匂い香る少女が現れる。その少女は主人公の少女に執着を持つ。それは綺麗に好意の形を描かなくて、それでも主人公の少女は、周りからぽっかり浮いてしまっている少女の事が心配になって仕方がない。ほとんどを虚構でコーティングして、それを固めることに必至な藻屑。『少女には向かない職業』の静香に通ずる…むむむむむと、『少女七竈と七人の可愛そうな大人』と『青年のための読書クラブ』は大好きだなぁと思ったけれど、それほどには乗りきれなかった『少女には向かない職業』をにわかに思い出した読み始め。けれども、半分過ぎたあたりからはいい感じに読み進められました。『少女には〜』に似ているけれども、主人公の少女・なぎさが、ひっそりと思いを寄せていた隣の席の坊主頭の野球部の少年・花名島正太とか、まったく現実を生きていないような兄・友彦とか、生き抜いたけれど大人になれなかったみたいな藻屑の父・雅愛とか、少女二人と彼女たち以外の人たちとの関わり具合が、『少女には〜』より好みだったのかもしれません。
実弾を撃ちまくるのも、砂糖菓子の弾丸を撃ちまくるのも、どちらも同じようにもの悲しさを感じます。『こんな人生全部嘘。嘘だから平気』って、そんな言葉は悲しすぎると、そう思いました。2004年富士見ミステリー文庫より刊行のものを単行本化。
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青年のための読書クラブ
青年のための読書クラブ 桜庭一樹著
東京・山の手にある聖マリアナ学園は、伝統ある女学校である。十九世紀、パリに設立された修道会を母体とし、二十世紀初めに修道女聖マリアナにより建てられた。薄絹のヴェールに包まれた乙女達の学び舎で繰り広げられる珍事件。旧校舎裏の雑木林のそのまた裏の、崩れかけた赤煉瓦ビル、その三階、廊下の一番奥には古い看板。斜めにかかったその看板には《読書倶楽部》の文字が。そこは、良家の淑女が集う学園内で、異端者である乙女達が集う憩いの場所であった。その場所に隠されるようにある《読書クラブ誌》には、学園の正史に残らぬ暗黒正史書き連ねられ、時を重ねるごとに脈々と綴られ続ける…。
学園誕生の頃からの百年が凝縮されて描かれています。
『烏丸紅子恋愛事件』では、理想的仮想恋愛に夢見がちな心を投影させる少女たち、その幻想を守ろうとする時の凶悪的な激情、非情さが丁寧に描かれていて、そこを抜け出す時に得たもの、無くしたものに思いを馳せる事が出来ます。激情といえば『一番星』では、理想的仮想恋愛とはまた違う視点から、たった一人、サムワンを欲する情動が描かれています。そして一人の人物の中に渦巻く別の顔、混沌として複雑怪奇な側面、それを内包する少女青年の姿が素晴らしかったです。妙に笑えるのが『奇妙な旅人』でした。歴史ある聖マリアナ学園に革命の波がやってきます。学園という凝縮された社会で、時流のながれの強さと、時の積み重ねの強さ共に感じられました。そして弱り疲れ果てても、いずれどこ吹く風と自分を通すことも強さと思うけれど、母は強しの母性の如き強さを見せてくれるこの時期の《読書クラブ》の部長の強さは素敵だなぁと思いました。
この物語の中で私が一番好きだったのは『聖女マリアナ消失事件』でした。第一章より遡って、学園設立前後が描かれたこの章の、息苦しさと、それでも進む道、その先に見出される一つの答え。胸が詰まるようになりながらも、温かい気持ちになることが出来ました。本当に空っぽか?とこちらに向かって本当に問いかけられているような、そんな気になるこの章は、『青年のための読書クラブ』というタイトルに、とても合っている章だなぁと思いました。そして最終章の『ハビトゥス&プラティーク』は、重すぎず、軽すぎない、そんな口当たりのストーリーで、ラストは、ここまで一冊読んできた読者にはうれしいような締めとなっています。
大変好みの一冊でした。装画/切り絵は天羽間ソラノさん。
『第一章 烏丸紅子恋愛事件/第二章 聖女マリアナ消失事件/第三章 奇妙な旅人/第四章 一番星/第五章 ハビトゥス&プラティーク』
東京・山の手にある聖マリアナ学園は、伝統ある女学校である。十九世紀、パリに設立された修道会を母体とし、二十世紀初めに修道女聖マリアナにより建てられた。薄絹のヴェールに包まれた乙女達の学び舎で繰り広げられる珍事件。旧校舎裏の雑木林のそのまた裏の、崩れかけた赤煉瓦ビル、その三階、廊下の一番奥には古い看板。斜めにかかったその看板には《読書倶楽部》の文字が。そこは、良家の淑女が集う学園内で、異端者である乙女達が集う憩いの場所であった。その場所に隠されるようにある《読書クラブ誌》には、学園の正史に残らぬ暗黒正史書き連ねられ、時を重ねるごとに脈々と綴られ続ける…。
学園誕生の頃からの百年が凝縮されて描かれています。
『烏丸紅子恋愛事件』では、理想的仮想恋愛に夢見がちな心を投影させる少女たち、その幻想を守ろうとする時の凶悪的な激情、非情さが丁寧に描かれていて、そこを抜け出す時に得たもの、無くしたものに思いを馳せる事が出来ます。激情といえば『一番星』では、理想的仮想恋愛とはまた違う視点から、たった一人、サムワンを欲する情動が描かれています。そして一人の人物の中に渦巻く別の顔、混沌として複雑怪奇な側面、それを内包する少女青年の姿が素晴らしかったです。妙に笑えるのが『奇妙な旅人』でした。歴史ある聖マリアナ学園に革命の波がやってきます。学園という凝縮された社会で、時流のながれの強さと、時の積み重ねの強さ共に感じられました。そして弱り疲れ果てても、いずれどこ吹く風と自分を通すことも強さと思うけれど、母は強しの母性の如き強さを見せてくれるこの時期の《読書クラブ》の部長の強さは素敵だなぁと思いました。
この物語の中で私が一番好きだったのは『聖女マリアナ消失事件』でした。第一章より遡って、学園設立前後が描かれたこの章の、息苦しさと、それでも進む道、その先に見出される一つの答え。胸が詰まるようになりながらも、温かい気持ちになることが出来ました。本当に空っぽか?とこちらに向かって本当に問いかけられているような、そんな気になるこの章は、『青年のための読書クラブ』というタイトルに、とても合っている章だなぁと思いました。そして最終章の『ハビトゥス&プラティーク』は、重すぎず、軽すぎない、そんな口当たりのストーリーで、ラストは、ここまで一冊読んできた読者にはうれしいような締めとなっています。
大変好みの一冊でした。装画/切り絵は天羽間ソラノさん。
『第一章 烏丸紅子恋愛事件/第二章 聖女マリアナ消失事件/第三章 奇妙な旅人/第四章 一番星/第五章 ハビトゥス&プラティーク』
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少女七竈と七人の可愛そうな大人
少女七竈と七人の可愛そうな大人 桜庭一樹著
誰もが振り返るかんばせを持つ七竈は、その容貌だけでなくいんらんである母の事もあって、小さな世界での生きづらさを感じずにはいられない。それを支えるのは、鉄道模型の数々と、同じく美しいかんばせを持つ幼馴染の雪風であった。
七竈の母、川村優奈の視点から彼女の過去を『辻斬りのように/五月雨のような』としてはさみ、その他七話からなります。七竈、川村家に迎えられた犬、雪風、雪風の母多岐などと、各話で視点が違っていて、様々な角度からの少女七竈を垣間見る事が出来ました。
七竈と雪風、二人一緒の時がいつまでも続く、続いて欲しいという思いがどちらにも強くあって、それでもいつまでも一緒ではいられないのだと心構えの時を意識する雪風の心持ちが強く伝わってくる『五話 機関銃のように黒々と』が好きでした。それから『六話 死んでもゆるせない』から最終『七話 やたら魑魅魍魎』での、七竈と母のやり取りと、少女から抜け出し始めた七竈の変化が凄く良かったです。
愛憎入り混じった母との関係性というある種の呪いというか呪縛から這い出す少女の物語なのだけれど、踏み出してなお物悲しさを誘われるのは、別離ということが主軸にあるからなのだろうなと思います。
いんらんで自由奔放に旅に出る七竈の母優奈も、まったくもって駄目な女だと嫌う事も出来ないのは、白っぽい丸である事に足掻く様に共感を覚えるからだろうし、彼女もまた七竈と同じように母という呪縛に縛られていたのだからだと思います。
この本はもうずっと気になっていたのだけれど、ようやく読むことが出来て満足です。装丁にとても目をひかれていたのだけれど、先日読んだ『花宵道中』でもイラストを担当されていた、さやかさんです。桜庭作品はこれで二冊目ですがこちらの方が好みでありました。
誰もが振り返るかんばせを持つ七竈は、その容貌だけでなくいんらんである母の事もあって、小さな世界での生きづらさを感じずにはいられない。それを支えるのは、鉄道模型の数々と、同じく美しいかんばせを持つ幼馴染の雪風であった。
七竈の母、川村優奈の視点から彼女の過去を『辻斬りのように/五月雨のような』としてはさみ、その他七話からなります。七竈、川村家に迎えられた犬、雪風、雪風の母多岐などと、各話で視点が違っていて、様々な角度からの少女七竈を垣間見る事が出来ました。
七竈と雪風、二人一緒の時がいつまでも続く、続いて欲しいという思いがどちらにも強くあって、それでもいつまでも一緒ではいられないのだと心構えの時を意識する雪風の心持ちが強く伝わってくる『五話 機関銃のように黒々と』が好きでした。それから『六話 死んでもゆるせない』から最終『七話 やたら魑魅魍魎』での、七竈と母のやり取りと、少女から抜け出し始めた七竈の変化が凄く良かったです。
愛憎入り混じった母との関係性というある種の呪いというか呪縛から這い出す少女の物語なのだけれど、踏み出してなお物悲しさを誘われるのは、別離ということが主軸にあるからなのだろうなと思います。
いんらんで自由奔放に旅に出る七竈の母優奈も、まったくもって駄目な女だと嫌う事も出来ないのは、白っぽい丸である事に足掻く様に共感を覚えるからだろうし、彼女もまた七竈と同じように母という呪縛に縛られていたのだからだと思います。
この本はもうずっと気になっていたのだけれど、ようやく読むことが出来て満足です。装丁にとても目をひかれていたのだけれど、先日読んだ『花宵道中』でもイラストを担当されていた、さやかさんです。桜庭作品はこれで二冊目ですがこちらの方が好みでありました。
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少女には向かない職業
少女には向かない職業 桜庭一樹著
中学二年の一年間で大西葵は人を二人殺した。
フリージアの花畑が広がる頃と、牡丹雪が降りしきる頃。
そのどちらにも、学校では目立たない、私服はゴスロリの宮乃下静香が傍らに居た。
学校ではお調子者の葵が、家庭の事情、冷めた感情の一つも友人に漏らせない様子が、紙一重である人間関係のシビアさを感じさせます。
家では大人しい葵の学校でのそんな様子も、昔は好きだった義父への嫌悪感も、伝えたい事がある事さえも理解しようとせず、娘の為だと言いながらその実自分本位である母と、そこからくる葵の孤独感が伝わってきます。
殺人についての件では、苦しんでいる、血が出ているといった表現がどうというよりも、非現実世界のようなふわふわとした印象が強く感じられました。
幼馴染である田中颯太の出張り具合と、主要人物静香のキャラ設定にもう一声あれば、私的には尚更楽しめたんじゃないかな〜と思いました。
『七竈』が気になっていたので、近いうちに読みたいなと思います。
中学二年の一年間で大西葵は人を二人殺した。
フリージアの花畑が広がる頃と、牡丹雪が降りしきる頃。
そのどちらにも、学校では目立たない、私服はゴスロリの宮乃下静香が傍らに居た。
学校ではお調子者の葵が、家庭の事情、冷めた感情の一つも友人に漏らせない様子が、紙一重である人間関係のシビアさを感じさせます。
家では大人しい葵の学校でのそんな様子も、昔は好きだった義父への嫌悪感も、伝えたい事がある事さえも理解しようとせず、娘の為だと言いながらその実自分本位である母と、そこからくる葵の孤独感が伝わってきます。
殺人についての件では、苦しんでいる、血が出ているといった表現がどうというよりも、非現実世界のようなふわふわとした印象が強く感じられました。
幼馴染である田中颯太の出張り具合と、主要人物静香のキャラ設定にもう一声あれば、私的には尚更楽しめたんじゃないかな〜と思いました。
『七竈』が気になっていたので、近いうちに読みたいなと思います。
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