有頂天家族
有頂天家族 森見登美彦著
偉大なる父狸・下鴨総一郎から、阿呆のしからしむところの血を受け継いだ四兄弟。長兄・矢一郎はその責任感のみを受け継ぎ、叔父である夷川早雲との偽右衛門の名をめぐる人間的政治謀略合戦を繰りひろげる。次兄・矢二郎は暢気な性格だけを受け継ぎ、蛙となって井戸の中に引きこもり、四男・矢四郎は純粋さだけを受け継ぎ、何かというと化けの尻尾を出してしまう。そして、三男・矢三郎は、阿呆ぶりばかりを受け継いで、恩師である天狗・赤玉先生の元へと馳せ参じる。
狸も好かった。ボロアパートに居をなす大学生奮闘記群も、狐も、それぞれ好かったけれど、この『有頂天家族』もまた面白かったです。亡き父狸と、母の偉大さの元に集まる四兄弟。素晴らしく温かい気持ちになれました。ぬらり飄々とした矢三郎を軸にストリーが進んでいくのもまた、肩に力が入りすぎずに読めました。これは矢一郎兄さんでも、矢四郎くんでもぎこちないだろうと思われるけれど、井戸から這い出してきた矢二郎兄さんあたりでもやってもらいたいなんて思ってしまいます。第六章、第七章、話も佳境に入ってからの、彼ら四兄弟の奮闘振りには、どうしたって力を込めて応援してしまいました。それから赤玉先生のいじけっぷりも可愛らしさがありました。何にせよ、赤玉先生もやはり天狗さま。
赤玉先生の御令息登場らしい?第二部も始まっているようなので、続きが楽しみです。弁天さまのあれこれも、次巻ではもう少し明らかになったら良いななんて思います。中々に謎の美女ですので。次はどんな騒ぎが沸き起こるのかを楽しみに待とうと思います。装画:平田秀一さん。
偉大なる父狸・下鴨総一郎から、阿呆のしからしむところの血を受け継いだ四兄弟。長兄・矢一郎はその責任感のみを受け継ぎ、叔父である夷川早雲との偽右衛門の名をめぐる人間的政治謀略合戦を繰りひろげる。次兄・矢二郎は暢気な性格だけを受け継ぎ、蛙となって井戸の中に引きこもり、四男・矢四郎は純粋さだけを受け継ぎ、何かというと化けの尻尾を出してしまう。そして、三男・矢三郎は、阿呆ぶりばかりを受け継いで、恩師である天狗・赤玉先生の元へと馳せ参じる。
狸も好かった。ボロアパートに居をなす大学生奮闘記群も、狐も、それぞれ好かったけれど、この『有頂天家族』もまた面白かったです。亡き父狸と、母の偉大さの元に集まる四兄弟。素晴らしく温かい気持ちになれました。ぬらり飄々とした矢三郎を軸にストリーが進んでいくのもまた、肩に力が入りすぎずに読めました。これは矢一郎兄さんでも、矢四郎くんでもぎこちないだろうと思われるけれど、井戸から這い出してきた矢二郎兄さんあたりでもやってもらいたいなんて思ってしまいます。第六章、第七章、話も佳境に入ってからの、彼ら四兄弟の奮闘振りには、どうしたって力を込めて応援してしまいました。それから赤玉先生のいじけっぷりも可愛らしさがありました。何にせよ、赤玉先生もやはり天狗さま。
赤玉先生の御令息登場らしい?第二部も始まっているようなので、続きが楽しみです。弁天さまのあれこれも、次巻ではもう少し明らかになったら良いななんて思います。中々に謎の美女ですので。次はどんな騒ぎが沸き起こるのかを楽しみに待とうと思います。装画:平田秀一さん。
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四畳半神話大系
四畳半神話大系 森見登美彦著
大学三回生の春までの二年間、実益のある事など何もしていないと断言出来る『私』は、過去を思うにつれ後悔することやむなし。『薔薇色のキャンパスライフ』への希望とその道が眼前に広がっていると信じたぴかぴかの一年生であった頃の阿呆の『私』は、おのおの胡散臭さが匂いたつ、映画サークル『みそぎ』、『弟子求ム』のビラ、ソフトボールサークル『ほんわか』、秘密機関『福猫飯店』のビラに翻弄されながら時計台周辺へと踏み入れる。勧誘員で賑わうその場所で『私』が踏み入れる世界これ如何に。
といった感じで、いつもの如くの『私』語りと、上手い具合に馬鹿馬鹿しさをにじませてくれるエピソードに大いに笑わせてもらえました。『私』の友人で人の不幸で三杯飯が食えるところの小津の暗躍へのアクティブさ、中々にあくどい事もしているのに読んでいる方では憎めません。『私』にも小津にも、素直に表さない愛嬌というものがたっぷり塗られています。樋口さんが大いに登場していたのが嬉しいところの一つです。誰かが世話を焼いていなきゃ霞を食うしかない仙人的な謎人物、大好きです。どんだけ黒髪の乙女が好きなのさ、なんて具合に、なんでもない様なところで程よく心の中で突っ込みつつ読むと更に楽しめるのではないかな〜と思います。
『第一話 四畳半恋ノ邪魔者/第二話 四畳半自虐的代理代理戦争/第三話 四畳半の甘い生活/最終話 八十日間四畳半一周』の四話構成で、それぞれ単品でも単純に笑えて楽しませてくれたのだけれど、最終話によってパラレルとしての存在証明を感じさせてくれました
大学三回生の春までの二年間、実益のある事など何もしていないと断言出来る『私』は、過去を思うにつれ後悔することやむなし。『薔薇色のキャンパスライフ』への希望とその道が眼前に広がっていると信じたぴかぴかの一年生であった頃の阿呆の『私』は、おのおの胡散臭さが匂いたつ、映画サークル『みそぎ』、『弟子求ム』のビラ、ソフトボールサークル『ほんわか』、秘密機関『福猫飯店』のビラに翻弄されながら時計台周辺へと踏み入れる。勧誘員で賑わうその場所で『私』が踏み入れる世界これ如何に。
といった感じで、いつもの如くの『私』語りと、上手い具合に馬鹿馬鹿しさをにじませてくれるエピソードに大いに笑わせてもらえました。『私』の友人で人の不幸で三杯飯が食えるところの小津の暗躍へのアクティブさ、中々にあくどい事もしているのに読んでいる方では憎めません。『私』にも小津にも、素直に表さない愛嬌というものがたっぷり塗られています。樋口さんが大いに登場していたのが嬉しいところの一つです。誰かが世話を焼いていなきゃ霞を食うしかない仙人的な謎人物、大好きです。どんだけ黒髪の乙女が好きなのさ、なんて具合に、なんでもない様なところで程よく心の中で突っ込みつつ読むと更に楽しめるのではないかな〜と思います。
『第一話 四畳半恋ノ邪魔者/第二話 四畳半自虐的代理代理戦争/第三話 四畳半の甘い生活/最終話 八十日間四畳半一周』の四話構成で、それぞれ単品でも単純に笑えて楽しませてくれたのだけれど、最終話によってパラレルとしての存在証明を感じさせてくれました
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きつねのはなし
きつねのはなし 森見登美彦著
『きつねのはなし/果実の中の龍/魔/水神』の四編です。奇譚集。
芳蓮堂、狐の面、胴の長いケモノ、龍、その他にも細々と共通したキワードが四つの物語を一筋通り抜けています。
現実の中にほの暗く湿り気のある幻想がひっそりと寄り添った其々のお話一つ一つもとても面白く読めたけれども、各話に通ずるものに思い巡らせるのも楽しかったです。
どれも京都が舞台であるけれども、朝一番のT路地を右に曲がるか左に曲がるかという程の違いしかないごく密接したパラレルワールド同士であると考えるのも面白いな、などと思います。そして其々が幻想的キーワードによって関わりあっているという具合に。
『太陽の塔』『夜は短し歩けよ乙女』と読み、今回『きつねのはなし』を読んだのだけれど、前述2作のコミカルな展開、語り口とは全く異なっていました。勿論、そちらの感じも大いに好きだったけれども、今回の『きつねのはなし』のようなものもとても良かったです。
暗くて湿っていて生温さを感じるような空気感の、もやもやとしたお話は好きです。
どちらの雰囲気のお話もこれからも書いていって欲しいな〜と思いました。
『きつねのはなし/果実の中の龍/魔/水神』の四編です。奇譚集。
芳蓮堂、狐の面、胴の長いケモノ、龍、その他にも細々と共通したキワードが四つの物語を一筋通り抜けています。
現実の中にほの暗く湿り気のある幻想がひっそりと寄り添った其々のお話一つ一つもとても面白く読めたけれども、各話に通ずるものに思い巡らせるのも楽しかったです。
どれも京都が舞台であるけれども、朝一番のT路地を右に曲がるか左に曲がるかという程の違いしかないごく密接したパラレルワールド同士であると考えるのも面白いな、などと思います。そして其々が幻想的キーワードによって関わりあっているという具合に。
『太陽の塔』『夜は短し歩けよ乙女』と読み、今回『きつねのはなし』を読んだのだけれど、前述2作のコミカルな展開、語り口とは全く異なっていました。勿論、そちらの感じも大いに好きだったけれども、今回の『きつねのはなし』のようなものもとても良かったです。
暗くて湿っていて生温さを感じるような空気感の、もやもやとしたお話は好きです。
どちらの雰囲気のお話もこれからも書いていって欲しいな〜と思いました。
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夜は短し歩けよ乙女
夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦著
『先輩』が思いを寄せる『黒髪の乙女』。
彼女がお酒とめくるめく大人の世界を求めて四条木屋町を渡り歩く。
錦鯉センター社長東堂にプチセクハラを受けているところへ、鯨飲の美女羽貫と、自称天狗、浴衣姿の樋口と出会い、夜の木屋町酒巡りの旅は底知れず広がっていく。そして偽電気ブランを追い求める先には謎の老人李白が登場する。
登場する個性的な人物達をもろともせず、ひたすらオモチロイコトを受け入れ探求する天然の『黒髪の乙女』の語り部分も勿論面白いのだけれど、路傍の石になりつつ天命を待ち『黒髪の乙女』という本丸を落とすべく、外堀固めに勤しむ『先輩』の語り部分も大変面白かったです。
『第一章 夜は短し歩けよ乙女』でがっちり掴まれ、『第二章 深海魚たち』では古本市巡りと謎の美少年に魅了される。李白氏主催の古書売り立て会と参加者の執念も忘れてはなりません。『第三章 御都合主義者かく語りき』では盛大なる学園祭を縦横無尽に右往左往。神出鬼没の『韋駄天コタツ』とゲリラ演劇『偏屈王』を追う学園祭事務局。『先輩』の決死の外堀固めと、『偏屈王』に隠されたロマンスに拍手を。そして『第四章 魔風邪恋風邪』での、ファンタスティックな大団円に大満足でした。
この本はずっと読みたいと思っていたもので、ようやく読む事が出来て、今年最後の読み物に最適なほこほこ感を満喫出来てとても良かったなと思います。笑みがこぼれる温かい一冊でした。
『先輩』が思いを寄せる『黒髪の乙女』。
彼女がお酒とめくるめく大人の世界を求めて四条木屋町を渡り歩く。
錦鯉センター社長東堂にプチセクハラを受けているところへ、鯨飲の美女羽貫と、自称天狗、浴衣姿の樋口と出会い、夜の木屋町酒巡りの旅は底知れず広がっていく。そして偽電気ブランを追い求める先には謎の老人李白が登場する。
登場する個性的な人物達をもろともせず、ひたすらオモチロイコトを受け入れ探求する天然の『黒髪の乙女』の語り部分も勿論面白いのだけれど、路傍の石になりつつ天命を待ち『黒髪の乙女』という本丸を落とすべく、外堀固めに勤しむ『先輩』の語り部分も大変面白かったです。
『第一章 夜は短し歩けよ乙女』でがっちり掴まれ、『第二章 深海魚たち』では古本市巡りと謎の美少年に魅了される。李白氏主催の古書売り立て会と参加者の執念も忘れてはなりません。『第三章 御都合主義者かく語りき』では盛大なる学園祭を縦横無尽に右往左往。神出鬼没の『韋駄天コタツ』とゲリラ演劇『偏屈王』を追う学園祭事務局。『先輩』の決死の外堀固めと、『偏屈王』に隠されたロマンスに拍手を。そして『第四章 魔風邪恋風邪』での、ファンタスティックな大団円に大満足でした。
この本はずっと読みたいと思っていたもので、ようやく読む事が出来て、今年最後の読み物に最適なほこほこ感を満喫出来てとても良かったなと思います。笑みがこぼれる温かい一冊でした。
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太陽の塔
太陽の塔 森見登美彦著
華が無い学生生活。殊更女性とは絶望的に縁の無い生活を送っていた『私』にも水尾さんという恋人が出来る。『私』は水尾さん研究を、四百字詰め原稿用紙に換算して二百四十枚の大論文に仕上げる程惜しみなく行っていたのだけれど、水尾さんからは研究停止宣告を受け、『私』は水尾さんに袖にされてしまう。そんな『私』の手記である。
紳士的に別れた後も水尾さん研究を続ける『私』の前に、これ以上水尾さんに付きまとうと警察を呼ぶという遠藤が現れたり、ちょっと病んでる湯島が架空請求に部屋を訪れたり、『私』が一目置いている飾磨を筆頭に、巨体である高藪や、精神衛生上の茨の道を歩む井戸という友人達が、作中男汁濃度を上げるべく登場します。けれども、何が一番面白かったのかと言えば、登場人物を含んで展開するストーリーを語る『私』の語りではないかと思います。恋愛事こそ学生の本分とでもいうような世の風潮と一線を画すべく、クリスマスを畏怖嫌煙し、染まらず紳士であろうとする『私』が繰り広げる、ちょっぴり上から目線の語りの数々。けれどもその実、同じクラブに属していた上村嬢の視線を『邪眼』と名づけて怖れたり、京大生狩りに追い詰められ訳も分からず路上の乾いた糞を掴んだりするのです。そして、本人の美質は往々にして、世間から見れば愚質となるということを、しっかり知っているというところが、余計に『私』に好感が持てる所であって、そんなちょっと紳士的であろうとする『私』の語りのなかに『ぷるぷる』なんて字面が混ざっていると愛着も沸いてくるというものではないだろうかと思います。『私』だけでなく、登場する他の面々も、ちょっと癖のありそうな所に反して、傷つきやすい心を持っていて、愛嬌がありました。
とても読みやすい1冊でした。装丁と『太陽の塔』という印象から勝手に、もう少し硬い感じなのかなと思っていたものだから、余計にそう感じたのかもしれません。程よく入る句点のおかげで、リズム良く読み進められたのもあるのだろうと思います。『私』がどう思うかはともかくとして、どっぷり青春という感じから、アジカンの歌がはまりだな〜と思ったのは、読後直後にアジカンを聴いたからか、そう思ったから聴いたのか、そんな感じです。
華が無い学生生活。殊更女性とは絶望的に縁の無い生活を送っていた『私』にも水尾さんという恋人が出来る。『私』は水尾さん研究を、四百字詰め原稿用紙に換算して二百四十枚の大論文に仕上げる程惜しみなく行っていたのだけれど、水尾さんからは研究停止宣告を受け、『私』は水尾さんに袖にされてしまう。そんな『私』の手記である。
紳士的に別れた後も水尾さん研究を続ける『私』の前に、これ以上水尾さんに付きまとうと警察を呼ぶという遠藤が現れたり、ちょっと病んでる湯島が架空請求に部屋を訪れたり、『私』が一目置いている飾磨を筆頭に、巨体である高藪や、精神衛生上の茨の道を歩む井戸という友人達が、作中男汁濃度を上げるべく登場します。けれども、何が一番面白かったのかと言えば、登場人物を含んで展開するストーリーを語る『私』の語りではないかと思います。恋愛事こそ学生の本分とでもいうような世の風潮と一線を画すべく、クリスマスを畏怖嫌煙し、染まらず紳士であろうとする『私』が繰り広げる、ちょっぴり上から目線の語りの数々。けれどもその実、同じクラブに属していた上村嬢の視線を『邪眼』と名づけて怖れたり、京大生狩りに追い詰められ訳も分からず路上の乾いた糞を掴んだりするのです。そして、本人の美質は往々にして、世間から見れば愚質となるということを、しっかり知っているというところが、余計に『私』に好感が持てる所であって、そんなちょっと紳士的であろうとする『私』の語りのなかに『ぷるぷる』なんて字面が混ざっていると愛着も沸いてくるというものではないだろうかと思います。『私』だけでなく、登場する他の面々も、ちょっと癖のありそうな所に反して、傷つきやすい心を持っていて、愛嬌がありました。
とても読みやすい1冊でした。装丁と『太陽の塔』という印象から勝手に、もう少し硬い感じなのかなと思っていたものだから、余計にそう感じたのかもしれません。程よく入る句点のおかげで、リズム良く読み進められたのもあるのだろうと思います。『私』がどう思うかはともかくとして、どっぷり青春という感じから、アジカンの歌がはまりだな〜と思ったのは、読後直後にアジカンを聴いたからか、そう思ったから聴いたのか、そんな感じです。
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