螢坂
螢坂 北森鴻著
ビアバー『香菜里屋』シリーズ第三弾。
誰も自分を待つ者のない街へと十六年振りにやって来た有坂祐二は、焼き杉造りの『香菜里屋』のドアを押し開ける。そこで十六年前の思い出、江上奈津実へと繋がる人物と、奈津実との最後の思い出螢坂の謎に出会う−『螢坂』。
三軒茶屋でタウン誌を発行している仲河は、三茶にまつわる(三茶夜噺 第六話「猫に恩返し」)が方々から人気を受けた。しかしある時、その元話の提供者から奇妙な話を持ちかけられる−『猫に恩返し』。
紹介されて『香菜里屋』に通い始めた谷崎真澄には、理由があった。それは幻の焼酎・弧拳を探し出すこと−『弧拳』。
『香菜里屋』シリーズの前作『桜宵』では、人の業みたいなものが、ひしひしと感じられましたが、今回の『螢坂』の方は、各話がいい話しだな〜としみじみ思う、そんな連作短篇でした。切なさを纏っているけれど、確かに温かい気持ちで読み終える事が出来ます。
ミステリ要素でいうならば、『双貌』のつくりがとても好みでした。入れ子の組み方だけでなく、切ない、のち、温かい、だけではなく、前向きな力強さも感じられます。
全体的には、香月がほのめかす、『香菜里屋』マスター・工藤の過去なんかも気になりました。次作の完結編を読むのが楽しみなような、寂しいような…。それにしても、このシリーズを読むと食思が騒いで大変です。どれもこれもが気になる一品。『香菜里屋』へ行って、是非是非食べてみたいと毎度ながらに思いました。
『螢坂/猫に恩返し/雪待人/双貌/弧拳』の五篇。
ビアバー『香菜里屋』シリーズ第三弾。
誰も自分を待つ者のない街へと十六年振りにやって来た有坂祐二は、焼き杉造りの『香菜里屋』のドアを押し開ける。そこで十六年前の思い出、江上奈津実へと繋がる人物と、奈津実との最後の思い出螢坂の謎に出会う−『螢坂』。
三軒茶屋でタウン誌を発行している仲河は、三茶にまつわる(三茶夜噺 第六話「猫に恩返し」)が方々から人気を受けた。しかしある時、その元話の提供者から奇妙な話を持ちかけられる−『猫に恩返し』。
紹介されて『香菜里屋』に通い始めた谷崎真澄には、理由があった。それは幻の焼酎・弧拳を探し出すこと−『弧拳』。
『香菜里屋』シリーズの前作『桜宵』では、人の業みたいなものが、ひしひしと感じられましたが、今回の『螢坂』の方は、各話がいい話しだな〜としみじみ思う、そんな連作短篇でした。切なさを纏っているけれど、確かに温かい気持ちで読み終える事が出来ます。
ミステリ要素でいうならば、『双貌』のつくりがとても好みでした。入れ子の組み方だけでなく、切ない、のち、温かい、だけではなく、前向きな力強さも感じられます。
全体的には、香月がほのめかす、『香菜里屋』マスター・工藤の過去なんかも気になりました。次作の完結編を読むのが楽しみなような、寂しいような…。それにしても、このシリーズを読むと食思が騒いで大変です。どれもこれもが気になる一品。『香菜里屋』へ行って、是非是非食べてみたいと毎度ながらに思いました。
『螢坂/猫に恩返し/雪待人/双貌/弧拳』の五篇。
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パンドラ'S ボックス
パンドラ'Sボックス 北森鴻著
『仮面の遺書/踊る警官/無残絵の男/ちあき電脳探てい社/鬼子母神の選択肢/ランチタイムの小悪魔/幇間二人羽織』の七編の初期短編集。+七編のエッセイ。
短篇とエッセイを交互に読む事が出来ます。
エッセイを読む事はあまり無いので、良い機会だったとな思います。
半分は短篇が占めていたというのも私としては良かったです。
最近になって北森鴻を読み始めたのだけれど、その既読の作品から受けるイメージと、エッセイの方の軽快な印象とが違っていて、大変おもしろく読めました。
プロットはかなり綿密に書いているんだ〜とか、その他もろもろも。
短篇の方は『仮面の遺書/踊る警官/無残絵の男/鬼子母神の選択肢』あたりが特におもしろく読めました。
『ちあき電脳探てい社』は『小学三年生』に掲載されていた作品ということで、幅広く書かれているんだな〜と、そちらも既読作品からは想像つかなかったものだから、違う一面をみられた一冊でした。
『仮面の遺書/踊る警官/無残絵の男/ちあき電脳探てい社/鬼子母神の選択肢/ランチタイムの小悪魔/幇間二人羽織』の七編の初期短編集。+七編のエッセイ。
短篇とエッセイを交互に読む事が出来ます。
エッセイを読む事はあまり無いので、良い機会だったとな思います。
半分は短篇が占めていたというのも私としては良かったです。
最近になって北森鴻を読み始めたのだけれど、その既読の作品から受けるイメージと、エッセイの方の軽快な印象とが違っていて、大変おもしろく読めました。
プロットはかなり綿密に書いているんだ〜とか、その他もろもろも。
短篇の方は『仮面の遺書/踊る警官/無残絵の男/鬼子母神の選択肢』あたりが特におもしろく読めました。
『ちあき電脳探てい社』は『小学三年生』に掲載されていた作品ということで、幅広く書かれているんだな〜と、そちらも既読作品からは想像つかなかったものだから、違う一面をみられた一冊でした。
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桜宵
桜宵 北森鴻著
ビア・バー『香菜里屋』シリーズ第二段。
『十五周年/桜宵/犬のお告げ/旅人の真実/約束』の五編からなる連作短編集。
一年前に病没した妻の遺品から手紙を発見した神崎は、手紙に記されていた通り、『香菜里屋』を訪れる。そこで出された春蛸の炊き込みご飯を食しながら神崎は、同じ味で違う色の炊き込みご飯を『茶飯』だと言い作ってくれた妻を思い出すのだが、その炊き込みご飯が一部で『桜飯』と呼ばれている事を知り、絶望的な思いに駆られる。妻が『茶飯』と言って作っていた炊き込みご飯は薄い緑色。薄緑の花びらをつける御衣黄を表したものだった。神崎は御衣黄にまつわる妻に後ろめたい思い出があった―『桜宵』
『香菜里屋』の臨時休業を機に、花巻の小料理屋『千石』を訪れた工藤。成り行きから店を手伝っていたのだが、閉店間際に一人の女性がやってくる。その少し後一人の男性もやってくる。女性、香坂有希江と男性、土方洋一は十年前、十年後にもう一度、ここで再会する事を約束していたのだった。会わなかった月日を確認するかのような二人の様子を温かく見守る『千石』主人、日浦と妻、夕海に対し、工藤の表情は厳しかった―『約束』
今回も各話にふんだんに登場する料理を、どんなものだろうかと想像して楽しめました。『旅人の真実』に登場する、工藤の古い友人である、香月圭吾の今後の登場も楽しみだな〜と思います。全体的に、個人の思いや我というか、ある種の執念的なものが根底にあって、それも一つのテーマとして繋がっているのかなと思いました。願い、思い、執念、妄執と段階的に違いはあるけれど、最終話『約束』は強く表現されていて、まさに妄執にかられたと言うべきもので、人の身勝手さ、自分本位さなんかがありありと描かれています。過去十年を振り返り心の中で語りかける男女の心の内が、対比的に書かれていて、効果的にはまれました。表紙の黒にピンクがなんとも素敵な一冊。
ビア・バー『香菜里屋』シリーズ第二段。
『十五周年/桜宵/犬のお告げ/旅人の真実/約束』の五編からなる連作短編集。
一年前に病没した妻の遺品から手紙を発見した神崎は、手紙に記されていた通り、『香菜里屋』を訪れる。そこで出された春蛸の炊き込みご飯を食しながら神崎は、同じ味で違う色の炊き込みご飯を『茶飯』だと言い作ってくれた妻を思い出すのだが、その炊き込みご飯が一部で『桜飯』と呼ばれている事を知り、絶望的な思いに駆られる。妻が『茶飯』と言って作っていた炊き込みご飯は薄い緑色。薄緑の花びらをつける御衣黄を表したものだった。神崎は御衣黄にまつわる妻に後ろめたい思い出があった―『桜宵』
『香菜里屋』の臨時休業を機に、花巻の小料理屋『千石』を訪れた工藤。成り行きから店を手伝っていたのだが、閉店間際に一人の女性がやってくる。その少し後一人の男性もやってくる。女性、香坂有希江と男性、土方洋一は十年前、十年後にもう一度、ここで再会する事を約束していたのだった。会わなかった月日を確認するかのような二人の様子を温かく見守る『千石』主人、日浦と妻、夕海に対し、工藤の表情は厳しかった―『約束』
今回も各話にふんだんに登場する料理を、どんなものだろうかと想像して楽しめました。『旅人の真実』に登場する、工藤の古い友人である、香月圭吾の今後の登場も楽しみだな〜と思います。全体的に、個人の思いや我というか、ある種の執念的なものが根底にあって、それも一つのテーマとして繋がっているのかなと思いました。願い、思い、執念、妄執と段階的に違いはあるけれど、最終話『約束』は強く表現されていて、まさに妄執にかられたと言うべきもので、人の身勝手さ、自分本位さなんかがありありと描かれています。過去十年を振り返り心の中で語りかける男女の心の内が、対比的に書かれていて、効果的にはまれました。表紙の黒にピンクがなんとも素敵な一冊。
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花の下にて春死なむ
花の下にて春死なむ 北森鴻著
『花の下にて春死なむ/家族写真/終の棲家/殺人者の赤い手/七皿は多すぎる/魚の交わり』の6編からなる、連作ミステリ短編集。
エプロンに刺繍されたヨークシャーテリア似のマスターが出迎えるビアバー『香菜里屋』。そこには、4種類の度数の異なったビールと、おいしい料理、そして、誰もにやさしく、相手に心を開かせてしまうようなマスター工藤が待っている。そんな『香菜里屋』には、謎を抱えた人や、謎に対する探究心旺盛な人々が自然と集まってくる。
自由律句の結社『紫雲律』のメンバー片岡草魚がこの世を去った。寒波に見舞われた4月の頭のことで、毛布に包まり冷たくなった草魚の部屋の窓際には、まだ早い一枝の桜の花が散っていた。フリーのライターで同じく『紫雲律』のメンバーであった飯島七緒は、灰の塊となった草魚の中から、生前の手術の名残だというビスとプレートをこっそりと持ち帰る。事件性のない草魚の死であったが、身元も分からず、戸籍さえも持たない、幻の住人であった。故郷を思いながらも、ひたすら隠し、遠ざけようとしていた草魚の一部だったものを、故郷の土に返してやるべく、七緒は、その場所へ向かう。―『花の下にて春死なむ』
ビアバー『香菜里屋』を訪れた、フリーのカメラマン妻木信彦は、自分を悩ませている出来事について、マスターの工藤に話し始める。報道写真の賞を撮った妻木は受賞記念の個展を開いていた。ところが、街中に貼ってあった個展のポスターが、ことごとく盗まれてしまったのだった。そのポスターとは、妻木が認められる切欠ともなった『終の棲家』の主人公の老人が移ったポスターで―『終の棲家』
草魚の死から二年。三十路を迎えた七緒は、弱小出版社の編集長高木正雄からプロポーズされる。容易に返事を出せそうもない七緒の心には、草魚のことをまだ忘れるわけにはいかないという思いがあった。そんな折、ビアバー『香菜里屋』に七緒宛の手紙が届く。そこには、草魚の残した句ではないかというものも書かれていた。―『魚の交わり』
この3編あたりが好みでした。それぞれの謎を、一つの可能性である答えへと自然に導く工藤のおかげで、全体的にやさしい雰囲気が漂っているなと思います。『香菜里屋』シリーズの続編の方も、近いうちに読めたらな〜と思います。最近はまりつつある北森鴻でした。
『花の下にて春死なむ/家族写真/終の棲家/殺人者の赤い手/七皿は多すぎる/魚の交わり』の6編からなる、連作ミステリ短編集。
エプロンに刺繍されたヨークシャーテリア似のマスターが出迎えるビアバー『香菜里屋』。そこには、4種類の度数の異なったビールと、おいしい料理、そして、誰もにやさしく、相手に心を開かせてしまうようなマスター工藤が待っている。そんな『香菜里屋』には、謎を抱えた人や、謎に対する探究心旺盛な人々が自然と集まってくる。
自由律句の結社『紫雲律』のメンバー片岡草魚がこの世を去った。寒波に見舞われた4月の頭のことで、毛布に包まり冷たくなった草魚の部屋の窓際には、まだ早い一枝の桜の花が散っていた。フリーのライターで同じく『紫雲律』のメンバーであった飯島七緒は、灰の塊となった草魚の中から、生前の手術の名残だというビスとプレートをこっそりと持ち帰る。事件性のない草魚の死であったが、身元も分からず、戸籍さえも持たない、幻の住人であった。故郷を思いながらも、ひたすら隠し、遠ざけようとしていた草魚の一部だったものを、故郷の土に返してやるべく、七緒は、その場所へ向かう。―『花の下にて春死なむ』
ビアバー『香菜里屋』を訪れた、フリーのカメラマン妻木信彦は、自分を悩ませている出来事について、マスターの工藤に話し始める。報道写真の賞を撮った妻木は受賞記念の個展を開いていた。ところが、街中に貼ってあった個展のポスターが、ことごとく盗まれてしまったのだった。そのポスターとは、妻木が認められる切欠ともなった『終の棲家』の主人公の老人が移ったポスターで―『終の棲家』
草魚の死から二年。三十路を迎えた七緒は、弱小出版社の編集長高木正雄からプロポーズされる。容易に返事を出せそうもない七緒の心には、草魚のことをまだ忘れるわけにはいかないという思いがあった。そんな折、ビアバー『香菜里屋』に七緒宛の手紙が届く。そこには、草魚の残した句ではないかというものも書かれていた。―『魚の交わり』
この3編あたりが好みでした。それぞれの謎を、一つの可能性である答えへと自然に導く工藤のおかげで、全体的にやさしい雰囲気が漂っているなと思います。『香菜里屋』シリーズの続編の方も、近いうちに読めたらな〜と思います。最近はまりつつある北森鴻でした。
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孔雀狂想曲
孔雀狂想曲 北森鴻著
著者の小説を読むのは初めてで、どんな感じかどきどきだったのだけれど、買いの一冊でした。
『ベトナムジッポー・1967』『ジャンクカメラ・キッズ』『古九谷焼幻化』『孔雀狂想曲』『キリコ・キリコ』『幻・風景』『根付け供養』『人形転生』の連作短篇集。
下北沢、駅から離れた住宅街のひどく目立たない路地の片隅にある『趣味骨董・雅蘭堂』。そこの店主が、眠り猫のように目が細い越名集治である。“その手の気配”に勘付いて越名が声を掛けてみると、そこには店には不釣合いな少女が、ショーケースの落とし金を密かに開けようとする姿があった。記憶を手繰り寄せれば、少女は数週間前、古いジッポーライターが入ったこのショーケースを、連れの老人と見ていたのだ。老人へのプレゼントだという少女を手ぶらで追い出した一週間後、祖父である長坂健作が雅蘭堂を訪れた。ジッポーライターにまつわる話を長坂に聞くにつれ、越名の古物商として以外の勘が働きだす。というのが『ベトナムジッポー・1967』。序盤から登場する少女、安積は、天真爛漫、あからさまに現代っ子、けれども時々妙な鋭さを発揮しながら、越名との軽快な掛け合いを、この後の短編の中でも繰り広げてくれる。
一番哀愁を感じたのは『ジャンクカメラ・キッズ』です。『市』で目を付けていた長火鉢を落とし損ねた越名の前に、東京から山形へと移り住み、そこで店を開いている竹島茂が現れる。普段ならば書画骨董を扱っている竹島だったが、古民具を扱う越名の仕事場を荒らした侘びだと言い、長火鉢に抱き合わせとなっていた、ジャンクカメラを越名にただで譲り渡す。ジャンクカメラを並べた越名の店に、何とも分類し難い男がやってくる。その男椎名の素性と意図が分かり、越名は協力することを約束したのだけれど、椎名の遺体が晴海埠頭に浮いたとの連絡があり…という感じです。
爽快さでいけば『古九谷焼幻化』じゃないだろうかと思います。越名の兄収一と因縁の中の犬塚晋作が参加する極秘の蔵開きに、収一の命によって参加することを余儀なくされた越名。その蔵開きの目玉が謎多き古九谷焼。越名の口座には兄からの入金一千万円が。しかし、偽物を掴まされた時には自腹を切れと言われる。表と裏を上手く行き来し、手広くあくどい骨董商の犬塚と、越名の対決がみどころでした。
骨董・古物の世界を覗き見られるし、品物に関するあれこれも知ることが出来るのだけど、小難しく説明的でないのが読みやすいなと思いました。著者の他のシリーズものも面白そうなので、今後読みたいです。何から手をつけるべきかが悩みどころ。
著者の小説を読むのは初めてで、どんな感じかどきどきだったのだけれど、買いの一冊でした。
『ベトナムジッポー・1967』『ジャンクカメラ・キッズ』『古九谷焼幻化』『孔雀狂想曲』『キリコ・キリコ』『幻・風景』『根付け供養』『人形転生』の連作短篇集。
下北沢、駅から離れた住宅街のひどく目立たない路地の片隅にある『趣味骨董・雅蘭堂』。そこの店主が、眠り猫のように目が細い越名集治である。“その手の気配”に勘付いて越名が声を掛けてみると、そこには店には不釣合いな少女が、ショーケースの落とし金を密かに開けようとする姿があった。記憶を手繰り寄せれば、少女は数週間前、古いジッポーライターが入ったこのショーケースを、連れの老人と見ていたのだ。老人へのプレゼントだという少女を手ぶらで追い出した一週間後、祖父である長坂健作が雅蘭堂を訪れた。ジッポーライターにまつわる話を長坂に聞くにつれ、越名の古物商として以外の勘が働きだす。というのが『ベトナムジッポー・1967』。序盤から登場する少女、安積は、天真爛漫、あからさまに現代っ子、けれども時々妙な鋭さを発揮しながら、越名との軽快な掛け合いを、この後の短編の中でも繰り広げてくれる。
一番哀愁を感じたのは『ジャンクカメラ・キッズ』です。『市』で目を付けていた長火鉢を落とし損ねた越名の前に、東京から山形へと移り住み、そこで店を開いている竹島茂が現れる。普段ならば書画骨董を扱っている竹島だったが、古民具を扱う越名の仕事場を荒らした侘びだと言い、長火鉢に抱き合わせとなっていた、ジャンクカメラを越名にただで譲り渡す。ジャンクカメラを並べた越名の店に、何とも分類し難い男がやってくる。その男椎名の素性と意図が分かり、越名は協力することを約束したのだけれど、椎名の遺体が晴海埠頭に浮いたとの連絡があり…という感じです。
爽快さでいけば『古九谷焼幻化』じゃないだろうかと思います。越名の兄収一と因縁の中の犬塚晋作が参加する極秘の蔵開きに、収一の命によって参加することを余儀なくされた越名。その蔵開きの目玉が謎多き古九谷焼。越名の口座には兄からの入金一千万円が。しかし、偽物を掴まされた時には自腹を切れと言われる。表と裏を上手く行き来し、手広くあくどい骨董商の犬塚と、越名の対決がみどころでした。
骨董・古物の世界を覗き見られるし、品物に関するあれこれも知ることが出来るのだけど、小難しく説明的でないのが読みやすいなと思いました。著者の他のシリーズものも面白そうなので、今後読みたいです。何から手をつけるべきかが悩みどころ。
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