神の子どもたちはみな踊る
神の子どもたちはみな踊る 村上春樹著
『UFOが釧路に降りる/アイロンのある風景/神の子どもたちはみな踊る/タイランド/かえるくん、東京を救う/蜂蜜パイ』の六篇。
ぽんっと突然産まれ出ていて、出てきた時から、もっと言えば母親の腹の中にいた頃から、既に時間はいつか死ぬ時へと向かって流れて行っているという理不尽さ。ならば何ゆえ出てきたのだろうな〜なんて思う時もあるわけです。
使命めいた存在意義なんてものよりも、自分の在り処とそこに存在する自分なりの理由の方が必要なのだよなと思うのだけれど、この本を読んでいるとその事が繰り返し思い巡りました。冠付けた存在意義よりもよっぽど手に入りにくいものだと思うし、欲している事さえも漠然と日々に埋もれてしまっているのに、ひっそりと傍らに寄り添って離れないものでもあります。
自分の在り処は自分の内に、その内側が空に感じる時、自分の居場所の不確かさを感じて、これ切ないな〜と思うのだけれど、本書はそれをつきつけられている感じでした。
『アイロンのある風景』や『タイランド』の中では、死ぬという事の準備段階が殆ど完了している人物も登場していて、当然どちらも心持は違うのだけれど、そのどちらにも至るには程遠いなと思います。幾年も歳を重ねてから読んだ頃にはまた違って受け取る事が出来るのかなと思いました。生きて存在して立っている事とその地盤の不安定さと不確かさなんてものが押し寄せてくるという感じです。
『UFOが釧路に降りる/アイロンのある風景/神の子どもたちはみな踊る/タイランド/かえるくん、東京を救う/蜂蜜パイ』の六篇。
ぽんっと突然産まれ出ていて、出てきた時から、もっと言えば母親の腹の中にいた頃から、既に時間はいつか死ぬ時へと向かって流れて行っているという理不尽さ。ならば何ゆえ出てきたのだろうな〜なんて思う時もあるわけです。
使命めいた存在意義なんてものよりも、自分の在り処とそこに存在する自分なりの理由の方が必要なのだよなと思うのだけれど、この本を読んでいるとその事が繰り返し思い巡りました。冠付けた存在意義よりもよっぽど手に入りにくいものだと思うし、欲している事さえも漠然と日々に埋もれてしまっているのに、ひっそりと傍らに寄り添って離れないものでもあります。
自分の在り処は自分の内に、その内側が空に感じる時、自分の居場所の不確かさを感じて、これ切ないな〜と思うのだけれど、本書はそれをつきつけられている感じでした。
『アイロンのある風景』や『タイランド』の中では、死ぬという事の準備段階が殆ど完了している人物も登場していて、当然どちらも心持は違うのだけれど、そのどちらにも至るには程遠いなと思います。幾年も歳を重ねてから読んだ頃にはまた違って受け取る事が出来るのかなと思いました。生きて存在して立っている事とその地盤の不安定さと不確かさなんてものが押し寄せてくるという感じです。
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象の消滅
象の消滅 短編選集1980−1991 村上春樹著
『ニューヨークが選んだ村上春樹の初期短篇十七篇。英語版と同じ作品構成で贈る−表紙より』ということで、私のように村上春樹を数冊しか読んだ事のない者にとっても、とてもありがたい一冊。前書き部分も興味深く読むことができました。それと、何と言ってもこの装丁が!これがワイヤーアートなんだ〜とひとしきり感心しました。短篇好きであるし、数冊読んだ感じは村上春樹も結構好きで、にも関わらず放置状態でした。発行年が2005年となっていて、その時すぐに購入していたはずだから、2年は放置状態だったんだな〜と思うと…;というのも、村上春樹の本を読もうかなと思うと、何だか面倒な気分になるのは何故なのだろうか…と思います。好きなのだけど、取り掛かるまでに時間が掛かる。けれども、やっぱり買っておいて正解でした。十七篇どれも面白いく読めたし、好みのものが多くて良かったです。
『パン屋再襲撃』では、パン屋襲撃失敗時の呪いを解くために、妻に言われるがまま真夜中に、散弾銃とスキーマスクを車に載せ、襲撃すべきパン屋を探します。パン屋再襲撃に対する妻の積極性と、再襲撃が必要なのか判断がどうにもつかないままに流されている僕の空気感が良かったです。
『カンガルー通信』は、デパートの商品管理課に勤める男が、動物園でカンガルーを眺めていたら、デパートに数多く入ってくる苦情の一つと、その苦情を入れた見も知らぬ女性の事を思い出し、手紙を音声としてテープに吹き込んでいくのだけれど、その語りが面白いのです。
僕は四月のある晴れた朝に、100パーセントの女の子とすれ違う。のだけれど、声を掛けることも出来ない。けれども本当は掛けるべき言葉があったのに…というのが『四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』で、いい話なのにこの短さで、素晴らしいです。
『眠り』は、眠らなくなって17日の主婦のお話なのだけど、読んでいて、不眠症という形でもなく、単に眠気が襲って来ないものならば、眠らずに済ませたいなと時々は思ってしまう私のようなものを、ちょっと諌めてくれる、やっぱり睡眠大事だよ…という感じでした。
『納屋を焼く』は、どろどろしい感じのない浮気相手が、突然行ったアフリカから恋人を連れて戻ってきます。その恋人と僕とのやりとりがみどころでした。とは言っても、浮気相手の女の子を巡る系ではないので、そこもすごく良かったです。
妹の婚約者をあまり好きになれず、そんな男を選んだ妹の事もちょっとがっかりしていた僕は、偏狭な性格であります。妹の方も、ものの見方がせまいのだと、兄に苛々です。変化を望まないものと、変化すべきと考えるものと、その両方に訪れる変化みたいなものについて、なんだか色々思うところがあったり、なかったり…と思ったのが『ファミリー・アフェア』。
『TVピープル』は、日曜日の夕方、僕の部屋にTVピープルがやってきます。TVピープルは全てが均一に縮小された奴らで、僕の部屋にTVを置いて去っていきます。これは映像的だなと勝手に思いました。世にも奇妙な〜的な感じで。
『午後の最後の芝生』も良かったです。夏の暑さに閉じ込められたような感じとか、僕が最後に芝を刈ることになった家と、その家の50歳前後の大きな女性。家の二階での二人のやりとり。部屋の持ち主を想像させられる僕。その時には、部屋の持ち主のことを、読んでいるほうもあれこれと想像してしまいます。今はどうしてるのだろうとか。
『沈黙』では、もうほんとうに、これ、ねぇ。みたいな具合に、大沢さんの話を今まさに聞いている感じでした。
この辺りが、より好みだったのだけれど、他のものも良かったです。どこと、どこと、どこが、というより全体の雰囲気が。なんだか1冊で得したなというそんな気分になれました。
『ニューヨークが選んだ村上春樹の初期短篇十七篇。英語版と同じ作品構成で贈る−表紙より』ということで、私のように村上春樹を数冊しか読んだ事のない者にとっても、とてもありがたい一冊。前書き部分も興味深く読むことができました。それと、何と言ってもこの装丁が!これがワイヤーアートなんだ〜とひとしきり感心しました。短篇好きであるし、数冊読んだ感じは村上春樹も結構好きで、にも関わらず放置状態でした。発行年が2005年となっていて、その時すぐに購入していたはずだから、2年は放置状態だったんだな〜と思うと…;というのも、村上春樹の本を読もうかなと思うと、何だか面倒な気分になるのは何故なのだろうか…と思います。好きなのだけど、取り掛かるまでに時間が掛かる。けれども、やっぱり買っておいて正解でした。十七篇どれも面白いく読めたし、好みのものが多くて良かったです。
『パン屋再襲撃』では、パン屋襲撃失敗時の呪いを解くために、妻に言われるがまま真夜中に、散弾銃とスキーマスクを車に載せ、襲撃すべきパン屋を探します。パン屋再襲撃に対する妻の積極性と、再襲撃が必要なのか判断がどうにもつかないままに流されている僕の空気感が良かったです。
『カンガルー通信』は、デパートの商品管理課に勤める男が、動物園でカンガルーを眺めていたら、デパートに数多く入ってくる苦情の一つと、その苦情を入れた見も知らぬ女性の事を思い出し、手紙を音声としてテープに吹き込んでいくのだけれど、その語りが面白いのです。
僕は四月のある晴れた朝に、100パーセントの女の子とすれ違う。のだけれど、声を掛けることも出来ない。けれども本当は掛けるべき言葉があったのに…というのが『四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』で、いい話なのにこの短さで、素晴らしいです。
『眠り』は、眠らなくなって17日の主婦のお話なのだけど、読んでいて、不眠症という形でもなく、単に眠気が襲って来ないものならば、眠らずに済ませたいなと時々は思ってしまう私のようなものを、ちょっと諌めてくれる、やっぱり睡眠大事だよ…という感じでした。
『納屋を焼く』は、どろどろしい感じのない浮気相手が、突然行ったアフリカから恋人を連れて戻ってきます。その恋人と僕とのやりとりがみどころでした。とは言っても、浮気相手の女の子を巡る系ではないので、そこもすごく良かったです。
妹の婚約者をあまり好きになれず、そんな男を選んだ妹の事もちょっとがっかりしていた僕は、偏狭な性格であります。妹の方も、ものの見方がせまいのだと、兄に苛々です。変化を望まないものと、変化すべきと考えるものと、その両方に訪れる変化みたいなものについて、なんだか色々思うところがあったり、なかったり…と思ったのが『ファミリー・アフェア』。
『TVピープル』は、日曜日の夕方、僕の部屋にTVピープルがやってきます。TVピープルは全てが均一に縮小された奴らで、僕の部屋にTVを置いて去っていきます。これは映像的だなと勝手に思いました。世にも奇妙な〜的な感じで。
『午後の最後の芝生』も良かったです。夏の暑さに閉じ込められたような感じとか、僕が最後に芝を刈ることになった家と、その家の50歳前後の大きな女性。家の二階での二人のやりとり。部屋の持ち主を想像させられる僕。その時には、部屋の持ち主のことを、読んでいるほうもあれこれと想像してしまいます。今はどうしてるのだろうとか。
『沈黙』では、もうほんとうに、これ、ねぇ。みたいな具合に、大沢さんの話を今まさに聞いている感じでした。
この辺りが、より好みだったのだけれど、他のものも良かったです。どこと、どこと、どこが、というより全体の雰囲気が。なんだか1冊で得したなというそんな気分になれました。
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1973年のピンボール
1973年のピンボール 村上春樹著
『風の歌を聴け』
の続編で、青春三部作の二部目。
『風の歌を聴け』を読んでから、だいぶ経っています。多分一年以上は経っている気がします。読んだ直後くらいにこの本を購入していたはずなので、その間部屋の中で積み上げられていたわけです。
勿論、僕と鼠が出てくるのだけど、前作と違うのは、二人は一瞬たりとも出会わない。セットで出てくるとすれば、回想シーンくらいです。僕の日常と、鼠の日常は別々に進行していきます。
この時期の僕は、翻訳の仕事をしていて、双子の女の子と暮らしていて、死んでしまった配電盤にしてやれることといえば、貯水池での葬送で、秋の日曜夕暮れ時には、突然ピンボールに心捉われる。そして、以前は毎日会いにいったピンボールの台「スペースシップ」を探しはじめる。
鼠はといえば、新聞の不要物売買コーナーで知り合った女と過ごし、日にちの感覚がなく、水曜だけが行き場を失っていた。
このままではいけないと感じて、変わらなくてはならないと考える。今の土地では変われないと思い、別の土地でも変われないかもしれないと考える。しかし、行動を起こさなければ何も始まらないのだ、と言う具合。
音楽とアルコールとコーヒーと煙草の香りが漂っています。そして、寝起きは兎に角、髭をそらなくてはならないのだなぁと。「ジェイズ・バー」のジェイが印象的でした。多くは知られていなかったジェイの人となりが見え隠れしていました。
僕と暮らす相手が、名前も分からない双子の女の子という設定は好きで、閉ざされたように、日常と感情が描かれていて、それだけでは息苦しい所を、非日常として双子がさし色になっているのだなと思います。けれども、僕といい、鼠といい、この男たちの日常と内面がメインの話なので、双子も、事務の女の子も、鼠の付き合っていた女も、女性は色をさすおまけとしての表現範囲からはみ出す事はないのだなとも思います。
三部作の完結編『羊をめぐる冒険』も読みたいところだけれど、他の種類の春樹本を読みたい気もします。ただ、春樹本がたくさんあるものだから、何から読もうか迷って中々手がつけられない感じであります。
『風の歌を聴け』
『風の歌を聴け』を読んでから、だいぶ経っています。多分一年以上は経っている気がします。読んだ直後くらいにこの本を購入していたはずなので、その間部屋の中で積み上げられていたわけです。
勿論、僕と鼠が出てくるのだけど、前作と違うのは、二人は一瞬たりとも出会わない。セットで出てくるとすれば、回想シーンくらいです。僕の日常と、鼠の日常は別々に進行していきます。
この時期の僕は、翻訳の仕事をしていて、双子の女の子と暮らしていて、死んでしまった配電盤にしてやれることといえば、貯水池での葬送で、秋の日曜夕暮れ時には、突然ピンボールに心捉われる。そして、以前は毎日会いにいったピンボールの台「スペースシップ」を探しはじめる。
鼠はといえば、新聞の不要物売買コーナーで知り合った女と過ごし、日にちの感覚がなく、水曜だけが行き場を失っていた。
このままではいけないと感じて、変わらなくてはならないと考える。今の土地では変われないと思い、別の土地でも変われないかもしれないと考える。しかし、行動を起こさなければ何も始まらないのだ、と言う具合。
音楽とアルコールとコーヒーと煙草の香りが漂っています。そして、寝起きは兎に角、髭をそらなくてはならないのだなぁと。「ジェイズ・バー」のジェイが印象的でした。多くは知られていなかったジェイの人となりが見え隠れしていました。
僕と暮らす相手が、名前も分からない双子の女の子という設定は好きで、閉ざされたように、日常と感情が描かれていて、それだけでは息苦しい所を、非日常として双子がさし色になっているのだなと思います。けれども、僕といい、鼠といい、この男たちの日常と内面がメインの話なので、双子も、事務の女の子も、鼠の付き合っていた女も、女性は色をさすおまけとしての表現範囲からはみ出す事はないのだなとも思います。
三部作の完結編『羊をめぐる冒険』も読みたいところだけれど、他の種類の春樹本を読みたい気もします。ただ、春樹本がたくさんあるものだから、何から読もうか迷って中々手がつけられない感じであります。
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